2010年5月29日土曜日

人間の能力を伸ばす環境とは(2005)



私たちが海外への遠征をできるだけ低年齢のうちに経験し、それを継続的に続けていくことができるような「環境」を作ろうとしているのは、何度も言っているように、「強くなるには海外で戦うのが当たり前、それがスタンダードな考え方である」、ということを誰もが「意識」できるようになってほしいからだ。

トレーニングジャーナルという雑誌に、「指導の際に「あれをしろ、これをしろ」と言わなくても、ある刺激を与える、ある環境を与えるだけで、ほおっておいても目的とする動きに誘導させられます。ヨーロッパなどでは、この生態的な動きを「エコロジー(ecology)」と表現し、「エコ」という言葉をつかっています。」とコオーディネーション能力について紹介されている。

無事に閉幕した愛・地球博でも「エコロジー」がテーマで、あちこちでそのテーマなり、スローガンを目にしたので、私も大変興味深く読んだが、「こういう意味でも使うのか、なるほどね」、と思った次第である。

そして、その時ふっと、ある心理学の先生が書いた「心が大事というのはいいけれど、すべてを揺さぶるものは「場」です。「場」が全部を揺さぶるわけです。」という文を思い出した。

人間は「環境」によって「心」が揺さぶられる。

だから、素晴らしい施設環境を作らなければならない、というのではない。

「環境」とは「意識」の集合体のようなものであり、施設などの建造物はその一部である。

だから、素晴らしい施設を作っても、「意識」がそのレベルで伴っていなければ、素晴らしい「環境」とはいえない。

私は、もし、すべての子どもたちが、「スタンダードな考え方」を持つことができたときにはどんな風になるのか、ということを良く考える。

施設などが何も変わらなくても、きっと素晴らしい「環境」ができるに違いない。

また、「環境」とは「全体」である。

個々の「もの」が素晴らしくても、「全体」としてバランスを失っているようでは、素晴らしい「環境」とはいえない。

さきに紹介したトレーニングジャーナルには「コオーディネーションはいろいろな領域で展開されていますが、その原点は「人間の動き」そのものです。全体を見ていくことです。」と書いてある。

トレーニングの指導現場では、この「全体を見る」ことが欠けているように感じる。

それが日本におけるトレーニング指導のもっとも大きな問題点であると指摘する声も多い。

より良い「環境」を作るためには、常に「全体」を見て、バランスを取りながら、いろいろなものを「柔軟」に取り入れることが重要であることは間違いない。

そのためには、私たち指導者は、子どもたちに必要なものは「何か」をいつも探し続け、その「感性」を磨く努力をしなくてはならない。

「これでいい」と言い切れるものは見つかりはしないのだから、「探し続けること」、「今、必要なことは何か」を真剣に問いかける姿勢が何よりも大切だと思う。

同じくトレーニングジャーナルに、「自分がやってきたことを否定するし、否定できるから、平気な顔をして今の技術指導ができるのです。」というスケートの指導者のインタビューが載っている。

「柔軟性」の大切さを説いているように思う。

こうした「意識」が大きく広がりを見せたとき、きっと素晴らしい「環境」はできてくる。

そういう意味で、愛知万博はいろいろと私に考えるきっかけを与えてくれる素晴らしいイベントであった。

「環境」が変われば、きっと素晴らしい選手にめぐり合うことができるはずだ。

「時代が変わり、環境が変わっても、人間が根本から変わることはない。変わるとは「意識」が変わるということだ。意識が変われば新しい人間が生まれる。人間が変わらないで、どうして新しい局面、新しい世界が展開するだろうか。」

と私の好きな心理学の先生は言っている。

そんな「新しい世界」で子どもたちがテニスをするのを想像するのは楽しいものだ。


人気blogランキング参加中。読み終わったらクリックお願いします!!

にほんブログ村 テニスブログへにほんブログ村

0 件のコメント:

コメントを投稿